あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

佐川さんが事務所に居る私の所に来る時は、社長自身は社内に居ない事が多かったはずなのに、どうして?

「俺は萌香を山中建設に無理にでも引っ張って、自分の秘書にしてそばに置いてからゆっくり落とそう思っていた。でも社長のそんな話から、時間をかける事が出来なくなってしまった。親父がすっかり乗り気で、この日曜日に萌香を連れて来いと言い出した。」

驚く私の顔を見た佐川さんは少し心配そうな表情をした。

「萌香抜きでこんな話になってしまって申し訳ない。でも昨日の居酒屋での萌香を見ていたら、俺もすぐでも手に入れたくなってしまった。正直良い口実が出来たと思ったよ。」

私は口を手で覆う。

あまりの急展開で、何を考えて良いのか分からなくなってきた。

そんな佐川さんは私の頭を撫でる。

「こんな事になってしまって本当にごめん。ただ、これはもちろん萌香の気持ちを確認してからだ。俺は萌香に嫌われているかもしれないからな。」

佐川さんは溜息をつく。

佐川さんは私に答えを求めている。

しかも日曜日の事を考えると、すぐこの場でだ。
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