あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
そんな事をいう佐川さんが今は愛おしい。
私はニッコリと笑って、佐川さんの手を引っ張る。
「私はお腹がペコペコです。」
佐川さんは仕方がないなと言う様に立ち上がった。
「あの居酒屋に行こうか。あそこからやり直そう。でも今日は飲ませないからな。」
そんな佐川さんの言葉に私は微笑む。
「また私の好きな物を注文して下さいね。」
ぐっと言葉が詰まったような佐川さん。
「おかしいだろ、いつの間にか萌香の好みを知っているなんて。会社の飲み会やら萌香との会話とかで知らないうちに頭に入っちゃっててさ。」
「嬉しいですよ。」
私はポツリと言う。
聞こえなくても良いかな…って思うくらいの声で。
「よし、出掛けよう。」
佐川さんのその表情で、私のつぶやきは聞こえていたのだろうと思う。