あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

そう言った私に佐川さんは驚いた。

何かを言いかけたが、ちょうどエレベーターが1階に着いた。

大きなエントランスを二人で手をつないで歩く。

外へ出ると、さすがに暗い。

そして私達はゆっくりと歩き出す。

こないだあの居酒屋から歩いてきたはずだが、全く私には記憶がない。

ビールに酔った私を強引に引っ張ってマンションに連れて来た佐川さん。

無言だったのも思い出す。

私も余裕がなかったけど、実は…。

佐川さんも余裕がなかったのかも。

そんな風に考えると、つい笑みがこぼれた。

「佐川さん、何かこうやって二人で歩くのも良いですね。」

私はこう言って繋がれている手を見てから、佐川さんを見上げた。

何故か怖い表情をしている佐川さん。

あれれ?
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