あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私、何か佐川さんを怒らせたかな?
何となくその後は佐川さんに話しかける事が憚られて、結局無言で私達は昨日の居酒屋に向かった。
入口の前で昨日しゃがみ込んでしまった場所をふっと見た。
するとすぐにその次の場面を思い出す。
私はハッとして、思わずつないでいる手に力が入ってしまった。
佐川さんがやっとこちらを向いてニヤッと笑う。
「萌香も思い出したか?ここが萌香のファーストキスの場所か?」
そう聞かれてハッとする私。
「佐川さんとのファーストキスなら…、そうです。」
「ん?」
佐川さんは不思議そうな顔をする。
でもとにかく二人で居酒屋に入って行った。
昨晩の奥の席が空いていた。
そこに昨日のように向かい合って座ると、注文はやっぱり佐川さんがした。