あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「男は何でも好きな女の初めてになりたいものなんだ。そして俺は萌香の最後の男にもなりたい。」
まるで私の心の中の問いに答えるかのようなそんな佐川さんのセリフ。
「…まあ、俺の勝手なやきもちだから気にするな。」
佐川さんはそう言って、注文したビールを飲んだ。
私も思わずウーロン茶を飲んだ。
佐川さんと居る事で火照っている身体に、冷たいウーロン茶は気持ち良かった。
身体の中にすうっと入っていく。
「それともう一つ聞きたい事がある。」
また佐川さんは難しい顔をした。
「さっきの転職するつもりがないってどういう事?」
「えっ、そのままの意味ですが。」
私はきょとんとして、佐川さんを眺める。
「俺はちゃんと言っただろう。萌香を秘書にするって。」
声を低くして佐川さんはそう言うと、から揚げを口に入れる。