あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

すると佐川さんは足元を見た。

その時、私の机のそばにある作業服の段ボールに気が付いたようだ。

「ああ、俺の分は勿体なかったな。」

そんな事を言う佐川さん。

「これ、みんなに配れば良いんだろう?」

佐川さんはひょいとその段ボールを持ち上げる。

「でもまだ各課ごとに分けてないんです。」

私は慌てて止める。

「じゃあ、俺がこのまま持って行くから、相原さんが付いて来てよ。それで配ってしまった方が早いだろう。」

いつもいろいろ手が掛かる反面、佐川さんはこういう気の利くところがある。

佐川さん曰く、ご両親が忙しくて、小さい頃は何でも自分でするようにと教育されてきたらしい。

「だからついいろんな事に手が出てしまう。」

以前そんな事を言って笑っていた。

でも午前中のガソリンカードの記入のような、チマチマした面倒な事を敬遠する。
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