あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

そう言って何度も私の背中を撫でる。

そんな優しいこと言わないでよ。

もう限界。

私は佐川さんの胸に顔を押しつけて泣く。

「萌香、部屋に入ろう。」

佐川さんがそう言ったのは、私が佐川さんの家のマンションのドアの前で散々泣いた後。

どうやってエレベーターから降りたのかも覚えていない。

しかも声をあげて、子供みたいに泣いた。

やっと気持ちがおさまった私は恥ずかしくて顔を上げる事が出来ない。

「萌香、お前の本音が出せる相手でありたい。」

佐川さんはそう言ってまだ乾いていない頬の涙を拭いてくれた。

そのまま玄関のドアを開けて、中に入る。

いつも会社で顔を合わせている佐川さんだけど、こんなにも私が自分の感情をぶつけたのは…、当然初めて。

驚いているかな。
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