あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
一瞬私の唇に触れたと思った途端、それは離れた。

「えっ?」

すぐに離れた唇が寂しい。

スッキリとした佐川さんの目が一層細くなる。

「萌香は本当に俺の事好き?俺ばっかり気持ちをぶつけて、萌香の気持ちをちゃんと聞いていないよな。」

「えっ?」

私はじっと考える。

私は自分の中で思っている事を、ちゃんと言葉にしていない…。

ハッと我に返ると、ニヤニヤする目の前の佐川さん。

「言ってよ、萌香。聞きたい。」

私は視線を逸らしかけたけど、佐川さんが近すぎてそれが出来ない。

「俺の名前知っているよな。退職の手続きをしたばかりだもんな。」

うっ…と詰まる私。

「ついでに名前なんかも呼んでくれると嬉しいんだけどな。」

そして私の鼻を甘噛みする。
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