あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「痛い。」
痛いと言うほどではなかったんだけど。
私ははにかんだ。
「こら、萌香。早く言えよ。」
佐川さんは私の耳元で囁く。
私は自分の定位置となった佐川さんの胸に顔をうずめて言った。
…とても佐川さんの顔を見てなんて無理だったから。
「郁也さん…、私も好き…みたいですよ。」
私の耳を通じて、佐川さん…いや郁也さんの胸の鼓動が早くなったような気がした。
「郁也さん?」
それ以外何の反応を示してくれない郁也さん。
私は不安に思って、顔を上げた。
どこかの世界に飛んで行ってしまったかのような郁也さんの表情。
「郁也さん?」