あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私はあんな風に家を出て来たから、当然持ち合わせがない。

「とにかくお借りします。」

結局私はキャッシュカードを受け取った。

「郁也さんの仕事が早く終わったら、一緒に買い物行けるのにな。」

そう私がつぶやくと、うれしそうに郁也さんは笑った。

「萌香がそんな事を言ってくれるなら、なるべく努力する。」

そんな風に茶化して私の顔を見る。

「途中で仕事を切り上げるような事をしてはダメですよ。」

私はハッキリとそう言う。

私達はそれぞれバタバタと支度を始めた。

「さっ、行きますね。」

私はいつもの電車に乗るつもりで、そろそろここを出ようとしていた。

「そんなに早く出るのか?」

いつもぎりぎりの電車に乗る郁也さんはまだ着替えを終えていない。

「私はいつもの電車に乗って行きますから。後からごゆっくりどうぞ。じゃあ、行ってきます。」
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