あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
そう、会社で私の事をそう呼ぶ人はただ一人。
「佐川さん、今日は会社内でパソコン作業ですか?」
私はいつも会社で接しているように、郁也さんに話しかけた。
「そんな所で何しているんだ?」
そう言いながら郁也さんが近寄ってくる。
誰かに聞かれたら、絶対ばれちゃう。
そんな話し方。
「いえ、山根さん宛のFAXを持ってきたんです。」
そう言って山根さんのデスクの上を指さした。
「ふ~ん。」
郁也さんはそう言って、私をもう一度見た。
「社長に何か言われたか、それとも小夜子さんか。」
郁也さんはその事が確かめたかったに違いない。
「あれ以上は大丈夫でした。でも小夜子さんにはちゃんと話そうと思っています。」