あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
プライベートな郁也さんを知れば知るほど、会社で知っていた郁也さんがほんの一部だったことが分かって来た。

「日曜日は実家へ行くから、明日デパートでも行こうか。」

食べながら郁也さんがそんな事を言った。

「デパート?」

私は一瞬箸が止まった。

「俺の記念品の担当なんだろう?」

ニヤリと笑う郁也さんは生姜焼きを口に持っていく。

「覚えていてくれたんですか?」

私は不思議そうに聞いた。

「俺、今は作業着だけど、山中建設に戻ったら専務になるんだ。当然スーツでの出社が多くなる。だから萌香にネクタイを選んで欲しい。そのうちの1本を会社からの記念品にしたらいいだろう。」

「1本?」

私はますます不思議そうな顔をした。

「俺はネクタイをそれ程持っていないからな。何本か欲しいと思っている。」

良い考えだろうと言っているような郁也さんの表情。
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