あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

どうも工務課の人達は、佐川さんが退職する事をもう知っているようだ。

そりゃ、そうだよね。

仕事の引継ぎがあるんだから。

「みなさん、サイズは間違っていないですか?」

私は各デスクに作業着を持って戻った人達に、もう一度確認する。

ぐるっと見渡すと、みんな一様にうなづいてくれた。

「じゃあ、お邪魔しました。」

私は空になった段ボールを畳もうとした。

そこにするりと手が出て来た。

「相原さん、段ボールは俺が後始末しておくよ。」

佐川さんがそう言ってくれたので、私はお礼を言ってそのまま工務課を後にした。

でも…、こういう事も佐川さんが居なくなると、手伝ってくれる人が居なくなるんだな。

そんな事を思うと、ちょっと寂しい気がした。

他の人も恐らくこちらからお願いをすれば、みんな手伝ってくれる人ばかりなのは分かっている。

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