あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「でも私はそんな郁也さんを見た事がないって言ったんです。そうしたらみなさんが私に対してはそんな態度を取る郁也さんを見た事がないって不思議がっていました。私はてっきり郁也さんにとって私はそんなぶつかる対象にもなれないんだなって、へこんでいたんですけど。」

でもそんな事も昨日の郁也さんの告白で分かったつもり。

「ダメなんだ。俺にとって萌香は何故だか最初からぶつかる相手じゃなかったんだ。うまく説明できないんだけど、もう初対面から俺にとっては特別な存在だったんだと思う。」

ちょっと恥ずかしくて、私は郁也さんに合図をして、シンクに自分の空になった食器を運ぶ。

その後を同じように食器を持ってついてくる郁也さん。

「後片付けしちゃいますね。」

間が持たず、何故か一生懸命お皿を洗っている私。

私は食器を洗い終えると、振り向いた。

一度リビングに行ったはずの郁也さんが私の様子を見て、またこちらに近づいて来ていたようだ。

「うわっ。」

真後ろに居た郁也さんに、思わず声が出てしまった。

「萌香は俺の事を幽霊か何かと間違えていないか?」
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