あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「…痛い、痛い…。」

私はそんなはかなげな自分の声に驚く。

まるで呪文のようにその言葉が口から洩れる。

でも嫌じゃない。

なんだろう、この痛み。

私は不思議な感覚にとらえられていた。

「大丈夫か?」

そんな私の様子を、心配そうにしている郁也。

「辞めるか?」

私は首を横に振った。

「違うの…、痛いんだけど…、違う…。辞めて欲しくないの…。」

うわごとのようにそんな言葉を繰り返す私。

こんな感覚、初めてだ…。

意識がぼんやりとしはじめる。

すると郁也が顔を寄せて来た。

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