あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私は社長に向かって答えた。

「…実家に戻られるそうですね。チラッとですが、教えて頂きました。」

私は社長の様子を伺う様に言った。

「そうか。佐川は相原さんにその事を話したのか…。」

社長は少し意外そうに私を見た。

「佐川からは実家の事は誰にも言わないでほしいと言われていたんだ。ふーん、そうか、相原さんには話したか…。」

意味あり気な顔をする社長。

「元々は佐川のじいさんが俺と顔見知りでな。そこから修行と言う形で預かっていたんだが、そのじいさんの体調が思わしくなくて、会長を引退するらしい。」

私にそんな事まで話していいのかな。

私はお盆を持ったまま、遠慮気味にうなずく。

「初めからの約束だったが、あいつに今抜けられるのはしんどいな。」

困った顔をする社長。

確かに工務課で現場監督をしている佐川さんは、仕事が出来る…らしい。

職人さんにもきつい事を言うが、依頼者にも筋が通らないと食って掛かるようだ。
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