あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

「相原さん。」

「何かあったかな?」

私がそう言うと、木村君は私の横に居た山根さんを見た。

「あれ、山根さん、こんな所に居たんですか?さっき伊藤さんが探していましたよ。」

「そう、分かった。じゃあね、相原さん。」

何かもう少し話をしたそうな山根さんだったけど、木村君にそう言われて事務所を出て行った。

「木村君の用事は何だったかな?」

私は目で山根さんを見送ると、今度は木村君の方を見た。

「いえ、佐川さんにファイルをもらってくるように頼まれたんです。」

しゃきっとした顔をして木村君が言った。

「引継ぎの資料を作っていて、俺もいろいろ教わりながら手伝っているんです。」

そうか…。

郁也は着々と会社を退職する準備を始めているんだな。

郁也はここを辞めたら、もっと大変で責任の掛かる仕事が待っている。
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