あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
木村君はそう言うと、勢いよく事務所を出て行った。

とても仕事に前向きな後輩君を見て、私にも元気が出てきた。

「さあ、私も頑張ろう。」

一人残された事務所で、私は自分に言い聞かせた。

しばらく仕事に集中していると、そこに郁也が入って来た。

「これ、余ったファイル。」

ぶっきらぼうにファイルを私に差し出す郁也。

「引継ぎしながら、木村君に仕事を教えているの?すごく木村君がやる気になっていたよ。」

ファイルを受け取りながら、私は郁也に話しかけた。

「萌香、さっき山根と何を話していた?」

何だか様子がおかしい郁也を私はもう一度見る。

「別に…。郁也がここを辞める事をどう思っているのかとは聞かれたけど…。」

何やら郁也はブツブツ言っている。

「…やっぱり木村を寄越して良かったみたいだな…。」

最後にそう聞こえたような気がする。
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