あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私達が出て行くと、誰ともなく歩き始めた。
私は社長と小夜子さんと話しながら歩いていたが、いつの間にか私の横に山根さんが並んでいた。
「俺知らなかったんだけど、社長と小夜子さんって良い雰囲気なんだな。」
そう言って二人の方をチラチラと見ている。
私は返事に困ったけれど、二人の事は私から話す事でもないと思って、曖昧にうなづいた。
「そうそう、佐川さんの記念品を相原さんが選んでくれたんだって?」
山根さんは少し驚いたように言った。
「ええ、実はネクタイなんですよ。転職先で使うと聞いたので。」
私は二人でネクタイを選んでいる様子を思い出して、思わず微笑んでしまった。
「ふ~ん、そうなんだ。好みがあるからネクタイ選びは大変じゃなかった?佐川さんは気に入らなかったら、一切身に着けなさそうな感じだよな。」
山根さんのそんな言葉にうなずいてしまう私。
「佐川さんってそんな感じですね。」
私は笑ってしまった。