あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

そして大きな声を上げた。

「おおい、みんな聞いてくれ。」

みんなが一堂に山崎さんの方を注目した。

「今日はこれで佐川の送別会を締める。」

そして郁也に労いの言葉を掛けた。

記念品のネクタイを恭しく渡す。

その大げさな姿にみんながくすくす笑っている。

山崎さんのお酒の入った姿が、どことなくユーモラスだ。

郁也がネクタイの入っている箱を開けて、ネクタイをみんなに見えるよう掲げた。

「今日は佐川の都合で二次会はなしだ。しかし物足らない奴は飲みに行ってよし。今日に限っては会社で出してやる。」

社長のその言葉に歓声が上がる。

それが鎮まると、今度は郁也が話し出した。

「入社以来7年間、本当にお世話になりました。」

深々と頭を下げた郁也の姿は凛々しい。
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