あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「ここで一つ報告をしていきます。」
ざわざわとする中で、郁也と私の目が合った。
郁也の手が、私に前に来るように合図する。
思わず自分で自分を指さす。
みんなの視線が私に集まった。
「早く。」
思いがけない郁也の強い口調に驚きながら、おずおずと立ち上がって郁也の横に渋々並んだ。
みんなの注目の目が突き刺さる。
「俺はここに居る相原萌香さんと婚約しました。」
男の人特有の地響きのような低い声が響き渡った。
「まだしばらく萌香はこの会社にお世話になりますが、近々寿退職する事になりますので、それまでよろしくお願いします。」
郁也は私の目を見開いた表情をチラッと見たが、真剣な面持ちでもう一度正面を向くと、また深々と頭を下げた。
その郁也の態度に真剣さを感じたみんなは一瞬で静かになった。