あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

郁也が私に説明を求めている。

「あっ、郁也。こっちが私の一つ年下の弟の慎です。」

「初めまして。相原慎です。」

ひょこっと慎は私の隣で頭を下げた。

そんな慎をニッコリとした顔で見つめた郁也も挨拶をした。

「初めまして。今お姉さんとお付き合いさせてもらっている佐川郁也です。」

一瞬慎がひるんだのが分かった。

郁也の迫力が慎の好奇心に勝ったという所だろうか。

「うちまで案内します。」

慎は車まで連れて行ってくれた。

そして3人で乗り込むと、ゆっくりと車は走り出した。

「親父とお袋はお前が顔を見せてくれるってすごく喜んでいた。なかなか実家に帰って来ないから、心配していたんだぞ。」

そうか、今年はお盆も正月も実家に帰らなかったな。

何となく一人の方が気が楽で、何やかんやと理由をつけて帰らなかったような気がする。
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