あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「ちゃんと私の親には了解をもらっています。でもこちらに挨拶に行くのが先だとしっかり怒られてしまいました。うちは仕事の関係でなかなか親子といっても時間を取ってもらえなくて、その都合であっちが先になってしまいました。その事をしっかり謝罪して来いと言われて来ました。」

深々と郁也が頭を下げる。

お父さんもお母さんも、そして慎も目を丸くして、郁也の話を聞いていた。

「もし、お許しいただければ、もうこの瞬間から彼女は私の婚約者です。」

少し恥ずかしそうに、でも凛として郁也は言った。

さっきからチラチラと私を見るお母さんの視線に私は気が付いていた。

ついにお母さんが私に視線を合わせた。

「どうも普通の結婚と違う様に感じるんだけれど…、萌香はそれでいいの?」

とても心配そうなその表情。

「佐川さん、こんな娘であなたのような人の妻が務まるんでしょうか。」

お父さんも難しい顔を崩さないまま、そう言った。

「山中建設って、あの超大手ですよね。萌香がゆくゆくはそこの社長夫人になるという事なんですよね。大丈夫なんですか?」

慎も思わず心配が口に出てしまったという顔をしている。

家族がそう思うのは当たり前。
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