あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私も心配になって郁也の方を見た。
そんな事は言われても当たり前だというような郁也の余裕の微笑み。
「私も自分の立場上いろいろと考えました。でも彼女以外には考えられなかったんです。不器用だけど一生懸命で、自分の事よりも人の事を考えていて、とても優しいんです。ご両親が彼女をそうお育てになったんですよね。」
一旦息を大きく吐いて、郁也はにこりと笑った。
「…正直萌香の事は心配していました。つい、年子の手のかかる慎にばかり目が居てしまって、もう少し手を掛けてあげたかったというのが私の本音です。」
急にお母さんがそんな事を話し出したので、私はびっくりした。
ううん、私だけではない。
お父さんも慎も驚いているようだ。
「本当に手が掛からない子だったんです。今だって隣に住んでいる慎の家族に遠慮して、ここになかなか帰って来にくいのだろうと私は思っています。」
そして慎の方を向く。
「慎達がどうこうと言っているのではないのよ。慎達家族に気を使わせないようにってそれが当たり前だと思っているんですよ、この子。家族なのに自分は気ばかり使って…。」
お母さんはそう言って、今度はお父さんを見た。