あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
もうそう言ってくれた郁也の言葉は私に届かなかった。
心地良い電車の揺れと横に居る郁也の温かさに触れ、とっても穏やかに眠ってしまった私。
「…萌香、萌香。」
耳元で囁く郁也の声に、私はハッと我に返った。
「…あれ?」
短い時間にぐっすり眠ったみたいだ。
ここがどこなのか、初めは分からなかった。
「さっ、降りるぞ。」
郁也が目を開けた私の顔をなでた。
「…おはよう。」
思わず出てしまった言葉。
郁也は笑いをこらえた顔をしている。
「よほど気持ちよく眠れたんだな。」
そして私の手を取って、電車を降りた。