あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
郁也の目が揺らいだような気がした。
私は郁也の事をただ見つめていた。
「萌香が自分からいろんな事を話してくれる時を待っている。それまでは萌香がなんと言おうと、俺は萌香に片思いだ。」
郁也は照れくさそうに顔を背けた。
「…だから俺は萌香がどこかへ行ってしまわないか、俺の前からいなくなってしまわないか心配でたまらない。」
私は思わず目を閉じた。
私が思っていたそんな簡単な事じゃなかった。
いつも自信満々で、私を強引に引っ張っていく郁也がこんな事を考えていたなんて…。
「…今まで誰にも話した事がないの。ううん、話せないの。話してしまうと、私自身がおかしくなってしまいそうだから…。」
私の頭に、大学時代の5人組の顔が浮かんでくる。
もちろんその中には有美の顔も…。
「…萌香?」
「4年も一緒に居た仲間が、この世で一番顔を合わせたくない人になってしまうなんてどんな気持ちか分かる?」