あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

「滝川と申します。」

ああ…、やっぱり間違いない。

「ではお入りください。」

私は来客用のスリッパを出して、ニッコリと笑う。

とにかくここは上手くすり抜けたい。

「はい、お邪魔します。」

私は前に立ち、すぐそばにある会議室まで案内した。

「では、担当者を呼んでまいりますので、しばらくお待ちください。」

私は頭を下げて、そそくさとその場を退いた。

後ろからの視線を強く感じる。

慌てて事務所に戻ると、社長と目が合った。

「社長、滝川さんがお見えです。」

私の声と同時に、社長と山崎さんが立ちあがった。

「ありがとう。あとお茶だけお願いね。」

山崎さんはそう言って、二人は事務所を出て行った。
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