あなたに包まれて～私を分かってくれる人～
伊藤さんは倉庫に仕事の道具を返しに来たついでに事務所に寄ったようだった。

「いいえ、お疲れ様でした。」

私はニッコリと頭を下げた。

「そう言えば、相原さんは佐川の事を聞いた？」

伊藤さんは声を潜めて聞いてきた。

「退職の件ですか？」

私は伊藤さんを見る。

「びっくりしたよ。やっとあいつに現場を任せておけば大丈夫っていうところまで来たんだけどな。」

本当に惜しそうに伊藤さんは言った。

「最初の頃はやる気ばかりで、随分空回りをしていたんだけど…。」

伊藤さんは笑いながら続ける。

「あいつの熱心さにいろいろこっちも勉強させられたよ。まあ、その代りいろいろとフォローもしてやったがな。」

「そうですか。私は事務所に来る佐川さんしか知らなくて…。」

私は目を丸くした。

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