あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「いえ、彼女とは知り合いなんですが、久しぶりで驚かせてしまったみたいです。今日の所はこれで。」
篤弘は焦った顔を見せて、その場から立ち去った。
「透さん、ありがとうございます。」
私はホッとして、頭を下げた。
ああ、本当に良かった。
篤弘に腕を掴まれた瞬間、私はあの時の事を思い出し、身体が硬直してしまった。
きっと透さんに呼び止められなかったら、篤弘のなすがままで抵抗が出来なかっただろう。
でもあの時止めてくれたのは…。
「…萌香。」
私はあまりに必死で、透さんの後ろに居る人に気が付かなかった。
「有美…。」
そう、そこには有美も居たのだ。
有美は透さんを押しのけるように私の前に来た。