あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
優しく優しく私の頭を撫でる郁也。
「その時は私自身が私の存在を抹殺したかった。篤弘のあの真に迫った顔がちらついて怖かった。そして私という存在がみんなを傷つけた。特に有美を…。」
それ以来、同世代の女の人を話すのが苦手になった。
ましては男の人と2人きりになる事を避けてきた。
「でもあの後社会人になって、生活ががらりと変わってしまった事が私の救いだった。私の事を知らない人と新しい生活が出来る事で私は救われたんだと思う。」
私はニッコリと笑った。
「だから中途半端な気分であの会社を辞めたくないの。筋を通したいのよ。」
郁也がいきなり私を強く抱きしめた。
「俺との初めての時は…、大丈夫だったのか?」
私には郁也の言いたい事はすぐに分かった。
「私もずっとそれが心配で、誰とも付き合えなかった。ううん、人を好きになる事が怖かったのかもしれない。でも…。」
私はゆっくりと顔を上げて、郁也の首に手を回した。
「あの時は郁也に嫌われないかが心配で…、篤弘の事は頭になかったの。」