あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「実はですね…。」
私がひとつ前の電車で出勤したため、小夜子さんには篤弘の事を大雑把に話す事が出来た。
「それで、帰りに待ち伏せされていたんです。」
私がそう言うと、小夜子さんは表情を曇らせた。
「会社を知られてしまったのは、不味いわね。社長にも言っておくから、しばらくは誰かに駅まで送ってもらいなさい。特に遅くなった時は。」
「でも大学時代の仲間だったし、そんなに悪い人ではないんですよ。」
私は小夜子さんにそう答えた。
「だってはっきり相原さんの気持ちを伝えていないんでしょう?きっとまた姿を現すと思うわ。」
小夜子さんがそう言った時、社長が入って来た。
「おはよう。相原さん、今日から帰りは誰かにに送らせるから。」
あまりのタイミングの良さに私は社長の方を振り返る。
「佐川から電話をもらった。だからこれから朝礼でみんなにざっと話すけど良いかな?」
郁也がそんな事まで考えているとは思っていなかった。