あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

山根さんの嬉しそうな笑顔に私は負けてしまった。

私だって郁也が忙しい今、うちに帰っても一人だ。

山根さんに連れられて、私が下りる駅のそばのパスタ屋に入った。

会社の人と二人っきりで食事をするのは、郁也以外では初めてだ。

私は食事を始めると、以前気になった事を思い出した。

「そう言えば山根さん、こないだデスクにFAXを置きに行った時に気が付いたんですけど、もう使い古したような黄色の蛍光ペンにだけ名前が貼ってあったのを見つけたんです。何か意味があるんですか?」

そう、あの時郁也と…。

本題と外れた事を思い出し、私はハッとする。

そしてその事を頭から追い払って、山根さんの答えを待った。

山根さんは一瞬驚いたような顔をした後、何とも言えない表情になった。

「山根さん?」

押し黙ってしまった山根さんの様子がおかしい。

すると山根さんは胸ポケットから何かを出した。

「あっ。」
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