あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

それは名前のシールがはがれかけた、今まさに私が聞いた黄色の蛍光ペン。

「いつもは持ち歩いているんだ。でもあの時は、たまたまこれをデスクに忘れていって…。それを相原さんに見られていたなんて。」

少し照れたようなその顔。

「これは初めて相原さんにもらったペン。俺はその時に相原さんに惚れた。」

ちょっと見当違いの方に話が行ってしまったようだ。

自分で振ってしまった話に私は戸惑った。

「会社の備品はみんな各自で事務所の棚に取りに行っていただろう。前任の山田さんが退社して小夜子さんが来るまで、少しの間、総務が相原さん一人になった時に黄色の蛍光ペンを取りに行ったら、相原さんがちょうど棚の前に居て、これを渡してくれたんだ。ペンを手渡しでもらって、凄く新鮮で。」

山根さんはニッコリ微笑んだ。

「振り返りざまに、「これで良かったですか~?」って。その笑顔にやられちゃったわけ。だからその時のペンはこうやって書けなくなっても捨てられなくて、いつの間にか俺のお守りになっちゃったんだ。」

ごめんなさい、正直記憶にない。

私は山根さんに心の中で謝った。

「あれからもう5年だもんな。」
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