あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

寂しそうな山根さんの顔。

「そんな前から思っていてくれていたんですか…。」

私はぽろっと言葉を漏らした。

「ずっと佐川さんに相原さんには相手がいるって言われてたしな。それに相原さん自身にも表面の優しさの中にも、人を踏み込ませない雰囲気みたいなものを感じていたから。もしかしてあの面接の男が原因?」

山根さんは思ったより私の事をしっかり見ていたに違いない。

「優しい人なんですね、山根さん。」

私は山根さんをまっすぐに見る。

「もっと早く聞いていたら、私、もっと自分に自信が持てていたかもしれないです。会社に入社した時はすべてがボロボロだったんです。」

私はそれからゆっくり大学時代の事、そして郁也の事を話せる範囲で山根さんに伝えた。

「これで佐川さんと同じ位置に立てたかな?」

山根さんはニッコリと余裕のある笑顔を見せた。

「えっ?」

私の郁也に対する気持ちはすっかり山根さんに伝えたつもりだった。
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