あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「ここで割り勘なんて、男の顔を潰す気?」

そう言われたら、折れるしかない。

私達は横に並んで歩き始めた。

私の家まではほんの数分の距離。

「あっ。」

急に話を辞めた山根さんは、私に前を見るよう合図した。

「お帰り。ずいぶんゆっくりだね。」

そこに立っていたのは郁也だった。

「ただいま。今日は山根さんと食事をして来たの。」

私はそう郁也に報告した。

「ふ~ん、それはお世話様だったね。」

郁也はじろりと山根さんを見た。

「佐川さんに怒られる前に退散するよ。今日は楽しかった。」

にこやかに笑いながら、私に手を振った山根さんは一瞬郁也と目を合わせた。

「ありがとな。」

< 319 / 400 >

この作品をシェア

pagetop