あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
弱々しげな表情の郁也。

「思っていたより、仕事が大変そうだ。俺がしなければならない事がたくさんあり過ぎる。」

「郁也、夕飯は…。」

「いや、仕事に戻るから。萌香の顔が見れたらそれでいい。」

そう言って郁也は私に背を向けて歩いて行った。

「あっ…。」

私は何故かその後姿に声が掛けられなかった。

郁也の優しさがとても嬉しいのに…。

仕事を途中にして来てくれた郁也。

抜け出すのはきっと大変だったんだろう。

でも私は呑気に山根さんと食事をして来た。

その事に対して、どうも後ろめたいのか、素直に郁也の方を向けなかった。

郁也に対して、何も悪い事をしていないのに…。

でもこの気持ちはどこへ持って行ったら良いんだろう。
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