あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私はぼそりと言った。

「おれも頑張って相原さんのそばに居たつもりだけど…。」

そう、山根さんがかなり私を気遣ってくれていたのは感じていた。

でも私にはそんなに余裕がなくて…、否、それに気が付かないようにしていたのかもしれない。

「相原さんを見ていたら、よく分かったよ。やっぱり俺じゃダメなんだな。相原さんにそんな表情をさせている佐川さんが憎らしいよ。でもそんな相原さんを笑顔にも出来ない自分はもっと不甲斐ないよ。」

そしてふっと私に笑いかけた。

「佐川さんに何も考えずに飛び込んでみたら?仕事や俺の事なんて、後で考えたら良い事だよ。まずは佐川さんに笑顔を返してもらってきてよ。」

私は驚いて山根さんを見つめた。

「原因を作ってしまった俺が言うのもあれなんだけど、いつもの相原さんに戻ってほしい。」

私の中で何か張り詰めていたものが切れたような気がした。

「もうこうやって一緒に帰るのも最後にしよう。もうあのストーカー君も諦めただろう。」

私のアパートの前に着いた。

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