あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
28
郁也は夜中のうちに帰って行った。

私を起こさないように、そっと動いたようだった。

でも私は郁也の温もりが離れていく事に、本能的に気が付いてしまったようで、目を覚ましてしまったようだ。

「明日も早い。今日のうちに帰るよ。」

郁也は寝ぼけまなこの私の頬にキスをすると、立ち上がった。

「そのままで見送って。また連絡する。」

それだけ言い残して、郁也は玄関を出て行った。

でもそれは夢の中の事のように感じて…。

朝、隣に郁也がいない事が分かっていながら、がっかりしてしまった私。

もしかしてまだ居るんじゃないかって思ってしまった自分が恥ずかしい。

その代わり、こんな気分のいい目覚めはいつ以来だろう。

私はすっきりした気分でベッドを出ると、会社へ行く支度を始めた。

事務所へ入るなり、小夜子さんが私の顔を見て微笑んだ。

「相原さん、おはよう。良い顔しているわ。」

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