あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「…何でもありません。」

私は真っ赤になって、俯いてしまった。

「良いからついておいで。」

そのまま佐川さんは手をつないだまま、私を駅の方へ引っ張っていく。

やっぱり会社の最寄りの駅だ。

誰かに見られるとも限らない。

私は恐る恐る佐川さんに言った。

「佐川さん、会社の人に見られたら…。」

私の必死な顔に、佐川さんはくすっと笑って言った。

「相原さんは嫌?」

そんな風に聞かれると、嫌とは言えないよ。

でも実際に嫌じゃないし…。

「いえ、あの佐川さんに迷惑が掛かってしまわないですか?」

すると佐川さんは満面の笑みでつないでいる手を少し上げた。

「俺は相原さんと手をつないでみたかったからこうしてみただけ。相原さんが嫌じゃなかったら離さないよ。」
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