あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
篤弘は苦笑いをする。

「篤弘、前の会社は辞めたの?」

私は気になっていた事を、篤弘に聞いた。

「この不景気で、会社が傾いてしまってさ。若い奴は次の会社が見つかりやすいだろうと、早々とリストラされた。」

篤弘は苦笑いをする。

確かそこそこの建築事務所に就職したはず。

「俺もそんなに仕事が出来ない訳じゃないから、すぐに仕事なんて見つかると思ったら、なかなか難しくてな。でも初めてここだと思って面接に行った先に、萌香が居るなんてな。」

「まだ次の人が決まらないの。もし良かったら、もう一度自分から売り込んでみたら?」

「俺は萌香がらみで、不採用になったんだろう?」

篤弘は自嘲気味に笑った。

「もう私は退職する事になったから…。篤弘の面接は一番初めだったの。それだけ社長も期待していた人材だったのよ。でも私が邪魔する事になってしまうなんて…。」

「えっ、萌香はあの会社を辞めるの?」

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