あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
驚いたように篤弘は言った。

「うん。後で面接に入って行った人、覚えている?あの人の後を探しているんだけれど、私もその人の再就職先に行くことになっているの。」

詳しい事は話さずに、説明するのは難しい。

「…萌香、何か肝心な事を隠しているだろう。」

学生時代に戻ったかのような表情を篤弘はした。

そう、あの仲間には隠し事は出来ない私…。

「うん…、その人ね、私の婚約者なの。」

私がそう言うと、篤弘の表情が変わった。

険しい顔で私を見た。

「そういう事か。萌香は俺の事を忘れて、ちゃんと幸せになろうとしていたんだ。」

何となく嫌味なその言い方。

「俺は萌香に振られて、リストラされて、再就職もままならない。どうして俺だけこんな目に合うんだ。」

篤弘はそう言い捨てた。

先ほどとはがらりと変わってしまった篤弘の様子に私は驚いていた。
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