あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私はその声の主、郁也の隣に座った。
「うん。」
私は遠慮気味に答えた。
まだ緊張感は解けなかった。
「たまたま通りかかってさ。萌香を見たような気がして、ここへ入ったら、面接でお会いした人だなと思って。」
郁也は私だけに分かるように、ウインクした。
話を合わせろって事かな。
「確か、萌香の知り合いだって言っていたよな。」
私はうなずいた。
「…そう。大学時代の仲間。」
私は郁也の方を向いた。
俺がいるから大丈夫とでも言いたげなその表情。
そっとテーブルの下で手を繋がれた。
「私は萌香の婚約者の佐川郁也といいます。萌香を迎えに来たんです。これで失礼しても…。」