あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「間に合って良かったですね。」
私は思わず言った。
「うん。」
佐川さんはうなづく。
でもまだ手は離してもらえなさそうだ。
ううん、離してほしくないのは私かも。
私達はこの沿線に住んでいる。
佐川さんは会社から3つ目の駅、私は5つ目の駅で降りる。
多分お互いの家はそんなに遠くない。
でもいつも佐川さんは帰宅が遅いから、一緒の電車になる事はない。
朝も私はいつも余裕を持って出てくるから、ぎりぎりで会社に着く佐川さんとは電車で会う事はなかった。
「お互い電車で通っているのに、こうして一緒に電車に乗る事はなかったですね。」
私は佐川さんに話しかけた。
「そうだな。」