あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
31
私達はいつものように郁也の家に入った。

何だかとても久しぶりのような気がする。

「あれ…。」

郁也の服があちらこちらに散らかっている。

「ここには寝に帰って来るだけだからな。」

ちょっと恥ずかしそうに郁也は笑った。

私は部屋に入るなり、その服を拾い上げて行く。

「これを片付けなくちゃ落ち着かないわ。」

私はハンガーにかけたり、畳んだりしながら、洗えるものは洗濯機に押し込んで、スイッチを押した。

「萌香、話をしよう。それから夕飯を食べに出掛けよう。」

案の定、冷蔵庫には何もないようだ。

私達はソファに並んで座った。

「萌香、俺はこのまま親父のおぜん立てに乗ろうと思う。萌香にとっては不本意かもしれないが、今度の事といい、萌香と離れているとろくなことがない。」

私も口を開いた。
< 362 / 400 >

この作品をシェア

pagetop