あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私は電車のドアを背にしている。
その正面に立った佐川さんは、そう答えた。
「相原さんはさ…。」
何かを佐川さんが言ったようだけど、私には電車の音でよく聞こえなかった。
「佐川さん、何か言いました?」
私がそう聞くと、佐川さんはフッと笑った。
「次で降りるぞ。」
その駅は会社から4つ目の駅。
佐川さんと私が降りる駅の間の駅だ。
「ここならお互いの駅が近いから、ゆっくり出来るだろう。」
そう言う佐川さんにまた引っ張られて、私達は電車を降りた。
10分ほど歩き、おしゃれな居酒屋へ入る。
時間的にまだ少し早そう。
席はまだ満席という感じではなさそうだ。
「相原さん、初めはビールで付き合ってくれる?」