あなたに包まれて~私を分かってくれる人~

そんな佐川さんに、私はうなづく。

私達は奥の席に向かい合って座った。

周りはざわざわとし始めたところ。

店員さんが来ると、私に相談する事もなく、食べる物を注文していく佐川さん。

私の口をはさむ隙はない。

そして注文が済むと、店員さんが頭を下げて離れて行った。

「大丈夫。いつもこういう時に相原さんが頼むメニューにしておいたから。」

佐川さんはニッコリ笑う。

「でもどうして私の好きな物なんて知っているんですか?」

会社での飲み会だってせいぜい半年に1回くらいだし、帰りに何人かと飲みに行く時だって、毎回佐川さんが居る訳でもない。

それにしたってみんなは忙しいから、2,3か月に1回そういう機会があるかどうかぐらいだ。

そんなに一緒に飲んでいるとは言い難い。

「まあ、いいじゃない。」

そう言って佐川さんは今来たビールのジョッキを掲げる。
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