あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
そう、私の頬に涙が伝っていたのだ。

私は慌てて手を頬に持っていき、涙を拭く。

「すっ、すいません。勝手に涙が…。」

私はかなり焦っていたんだろう。

佐川さんは思いきり身体を乗り出してきた。

「悪いのは俺だ。変な事を言ってしまった。」

そして私の前で、テーブルに両手をつき深々と頭を下げる。

「辞めて下さい、佐川さん。」

もう私は半分パニック状態。

思わず目の前にあるビールを一気飲みしてしまった。

「相原さん、大丈夫?」

まだそれほど食べていない身体に、ビールはよく効く。

その事を身をもって体験してしまった。

「佐川さん、何だかふわっとして気持ちが良いです。」

私は大きく息をつきながら、ジョッキを置く。

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