あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
佐川さんはそう言うと、私を引っ張って歩き出した。

説明してやる…と言ったのに、ずっと無言で歩き続ける佐川さん。

私も聞く事も出来ずに、おずおずとついて行くしかない。

足がからみそうでも、バランスを崩さないのは、ちゃんと佐川さんが私のペースに合わせてくれているからなんだろう。

そんな事をぼんやり思う。

手は相変わらず、佐川さんに握られたままだ。

どれくらい歩いたんだろう。

私はいつの間にか、立派なマンションの前に立っていた。

「ここは?」

私は佐川さんにそう聞いた。

でも佐川さんはそれに答える事もなく、どんどんとマンションへ入っていく。

エレベーターが来て、二人で乗り込んだ。

多分、佐川さんの家なんだろう。

そううすうす感じて、私はドキドキし始めた。

どうして私は佐川さんの家に行くことになってしまったんだろう…。
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