あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
私は自分の後ろにある戸棚から、新しい黄色の蛍光ペンを差し出すと、山根さんからその古いペンを代わりに受け取った。

「ありがとね。」

そう言って山根さんは行ってしまった。

「ほら、相原さん。そうやって古いペンを受け取っちゃったじゃない。各課にちゃんとそういうものを集めるゴミ箱があるのに。」

確かに。

言われてみればそうかもしれない。

私は手の中にある黄色の蛍光ペンを見る。

いつもあまり意識しないで受け取っている自分に気づく。

「でもそれを相原さんは、当たり前みたいにしているじゃない。男の人はそのちょっとした事を面倒に思うみたいね。だからそれはそれで良いのかもしれないわね。私なら断っちゃうけど。」

小夜子さんは笑った。

「私にはこれぐらいしか出来ませんから。」

私は小夜子さんに微笑んでから立ち上がり、その蛍光ペンを捨てに行った。

「相原さん、この表だけ入力したら上がらせてもらうわね。」

< 5 / 400 >

この作品をシェア

pagetop