あなたに包まれて~私を分かってくれる人~
「俺、そこの跡取り。」

「え、えっ~?」

私は驚いて大声を出した。

さっきから佐川さんに驚かされてばかりだ。

「でも苗字が違いますよね?」

私は不思議そうに佐川さんを眺める。

「うん。母方がしている会社だから。父は一人娘の母と結婚したが、養子に入らず社長になった。だから俺は父の姓を名乗っている。つまり山中は母の旧姓なんだ。」

なるほど…、いやそんな所で感心している場合ではない。

「じゃあ、佐川さんはあの山中建設の社長となる人なんですか?」

私は驚いて、分かり切った事をもう一度聞く。

「そう。母方のじいさんが会長をしているんだが、体調がすぐれないんだ。だから俺が会社に戻る事になった。」

へぇ~、実はすごい人なんだ、佐川さん。

私は別の世界の事のように聞いていた。
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